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聖観世音菩薩 |
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妙源山觀音寺は、南油良の家々を一望するやや山手の格好の地を占め、静かに建ち並ぶ堂宇は往昔の歴史を偲ばせる。本尊の聖観世音菩薩を祀る観音堂のほかに、妙見堂や弁天堂などがある。
法道仙人によって養老元年(七一七)に開基され、慶長六年(一六○一)八月、僧長尊の時、当地の城主を務めた別所豊後守吉治の守護寺となって全盛期を迎えたのである。
また、天保九年(一八三八)に亡った十世珍純法印は傑出した僧であったらしく、神通力をもって奇瑞をおこし、人々から多くの信奉を集めたという逸話は、今もなお語り継がれている。
そして近年では、太平洋戦時中に同寺を兼務していた故・荒樋秀實白毫寺住職の縁によって觀音寺に寓居していた“老らくの恋”で知られる歌人の川口順が、愛人鈴鹿俊子と共に世俗を離れて松風を聴きながら幾日かを過ごしたロマンの地でもある。歌人武将源頼政と侍従の局の恋を描いた「款冬坊の記」は、ここでの生活をテーマにしたという。歴史とロマンを秘めた丹波の古刹である。
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